口腔管理体制強化加算(口管強)
口腔管理体制強化加算(口管強)とは
当院は「口腔管理体制強化加算(口管強)」届出済歯科医院です。
「口腔管理体制強化加算(口管強)」は、厚生労働省が定めた新しい制度で、2024年6月からスタートした歯科医院の評価制度で、従来の「か強診」を改定したものです。この制度は、虫歯や歯周病の重症化予防を目的とし、継続的な口腔管理を行う歯科医院を評価するもので、小児から高齢者まで幅広い年齢層の口腔機能管理を重視します。
<背景>
3歳児のう蝕歯数は、平成1年が平均2.90本であったのに対し、平成25年には平均0.63本へと減少しています。また、75歳~79歳の現在歯数は平均15.6本と確実に増加しています。
反面、歯周病罹患率は75歳以上で顕著に増加傾向にあり、これらのことからも、年齢など各ライフステージに応じたきめ細かな歯科医療の提供が望まれます。
かかりつけ歯科医の有無と、新しいう蝕の発生や現在歯数には、有意に関連があることが分析・調査から明らかになってきており、生涯を通じた歯科疾患の重症化を予防するため、、平成28年度診療報酬改定で新設されたのが、口腔管理体制強化加算(口管強)です。
将来、歯を失わないためには 〜予防先進国スウェーデンの例~
スウェーデンは、世界で最も予防が進んでいる国の1つですが、1960年代には、多くの国民がむし歯や歯周病にかかっていました。そのため、1970年代より国家戦略として、定期的なメンテナンスとホームケアの指導をした結果、小児のむし歯、及び大人のむし歯や歯周病の罹患率が減りました。厚生労働省による平成29年度歯科疾患実態調査によると、80歳時点での残存歯数は、スウェーデンでは21.1本に対し、日本は13.0本と約8本も差がありました。スウェーデンでは、小児期から継続して定期的に歯科を受診して予防を行っており、その結果、高齢になっても多くの国民が80歳で20本以上の歯を残すことができています。一方、日本では、「歯医者は痛くなってから行くところ」と考える方がいまだに多く、その結果、むし歯や歯周病になり、多くの歯を失っていると考えられます。
生涯にわたりご自身の歯でおいしく食べ、健康寿命を少しでも延伸するためには、メインテナンスがとても大切となります。
厚生労働省「平成29年度歯科医疾患実態調査」より
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口腔管理体制強化加算(口管強)に認定された歯科医院のメリット ~ 健康保険の適用範囲が拡大
口腔管理体制強化加算(口管強)では、口管強でない一般の歯科医院と比べて、健康保険の適用範囲が拡大されています。口管強でない歯科医院の場合、むし歯の重症化予防のためのフッ素塗布は3ヶ月に1度、歯周病重症化予防のためのメンテナンス(歯周病安定期治療)は3ヶ月に1度しか保険で認められていません。一方、口管強では、フッ素塗布、歯周病のメンテナンス(歯周病安定期治療)ともに、毎月保険が適用されます。
口腔管理体制強化加算(口管強)では、患者さまのかかりつけの歯科医院として、乳幼児期から高齢期まで生涯にわたって、むし歯や歯周病の重症化予防のための医療を提供し、保健指導を行うことで、歯の喪失リスクの低減をはかり、お口の中だけでなく、全身の健康の増進維持に寄与する事を目的としています。
健康寿命を延ばし、生涯にわたって心身ともに生き生きと過ごしていただくためには、病気になってからの治療ではなく、予防のための歯科医療を受けていただくことを推奨します。
むし歯の予防に
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歯周病の予防に
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「口管強」に認定されていない医院では 口管強ではない歯科医院では、むし歯の重症化予防のためのフッ素を塗布は、3か月に一度しか保険の適用が認められていません。 |
「口管強」に認定されていない医院では 口管強ではない歯科医院では、歯周病検査や歯石の除去・クリーニングは、3か月に一度しか保険の適用が認められていません。 |
「口管強」認定医院では 口管強では、むし歯の重症化予防のためのフッ素を塗布を、毎月保険適用で受けていただけます。 |
「口管強」認定医院では 口管強では、歯周病検査や歯石の除去・クリーニングを、毎月保険適用で受けていただけます。 |
全国の歯科医院の中で数割にも満たない程度
口腔管理体制強化加算(口管強)は認可要件が厳しく、どの歯科医院でも認定されるというものではありません。後述の施設基準を満たし、認定を受けているのは全国の歯科医院のうち数割程度という現状です(2025年5月時点)。
参考
歯の本数と医科の医療費について
50歳代、60歳代、70歳代において、残存歯数(残っている歯の本数)が多いほど、医科の医療費が低い事が報告されております。反対に、口腔環境が悪化し、残存歯数が少なくなるほど医科の医療費が高くなるという事が報告されております。
歯の本数と誤嚥性肺炎、アルツハイマー型認知症について
残存歯数が少なくなるほど、誤嚥性肺炎、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが高い事が報告されております(誤嚥性肺炎は死因の第7位、認知症は要介護になる原因第1位です)。
歯の本数と脳卒中について
脳卒中患者の口腔内について調査した研究では、50歳代の脳卒中患者の残存歯数は、日本人の平均残存歯数に比べ、有意に少なかった事が報告されております(脳卒中などの脳血管疾患は要介護になる原因第2位です)。
歯の本数と要介護について
65歳以上の高齢者では、残存歯数が19本以下の人は、20本以上の人に比べ要介護になりやすいという事も報告されております。
抜歯の原因
2018年の公益財団法人8020財団の調査では、抜歯になる原因で最も多かったのは歯周病(37%)、次いでむし歯(29%)、破折(18%)でした。破折(歯の根っこにひびが入る事)した歯の多くは、神経を取った歯であるため、破折の原因はむし歯由来と考えられます。すなわち、残存歯数が少ないという事は、むし歯や歯周病のために抜歯をした本数が多いという事になります。
口腔管理体制強化加算(口管強)届出済歯科医院は次の基準を満たしています
1.歯科医師が複数名配置されていること又は歯科医師及び歯科衛生士が、それぞれ1名以上配置されていること。
2.次のいずれにも該当すること。
・過去1年間に歯周病安定期治療(Ⅰ)又は歯周病安定期治療(Ⅱ)をあわせて30回以上算定していること。
・過去1年間にフッ化物歯面塗布処置又は歯科疾患管理料のエナメル質初期う蝕管理加算をあわせて10 回以上算定していること。
・クラウン・ブリッジ維持管理料を算定する旨を届け出ていること。
・歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準を届け出ていること。
3.過去1年間に歯科疾患管理料(口腔機能発達不全症又は口腔機能低下症の管理を行う場合に限る。)、歯科衛生実地指導 口腔機能指導加算、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料又は歯科口腔リハビリテーション料3をあわせて12回以上算定していること。
4.過去1年間に歯科訪問診療1若しくは歯科訪問診療2の算定回数又は連携する在宅療養支援歯科診療所1若しくは在宅療養支援歯科診療所2に依頼した歯科訪問診療の回数があわせて5回以上であること。
5.過去1年間に診療情報提供料又は診療情報連携共有料をあわせて5回以上算定している実績があること。
6.当該医療機関に、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理に関する研修(口腔機能の管理を含むものであること)、高齢者の心身の特性及び緊急時対応等の適切な研修を修了した歯科医師が1名以上在籍していること。なお、既に受講した研修が要件の一部を満たしている場合には、不足する要件を補足する研修を受講することでも差し支えない。
7.診療における偶発症等緊急時に円滑な対応ができるよう、別の保険医療機関との事前の連携体制が確保されていること。ただし、医科歯科併設の診療所にあっては、当該保険医療機関の医科診療科との連携体制が確保されている場合は、この限りではない。
8.当該診療所において歯科訪問診療を行う患者に対し、迅速に歯科訪問診療が可能な歯科医師をあらかじめ指定するとともに、当該担当医名、診療可能日、緊急時の注意事項等について、事前に患者又は家族に対して説明の上、文書により提供していること。
9.5に掲げる歯科医師が、以下の項目のうち、3つ以上に該当すること。
・過去1年間に、居宅療養管理指導を提供した実績があること。
・地域ケア会議に年1回以上出席していること。
・介護認定審査会の委員の経験を有すること。
・在宅医療に関するサービス担当者会議や病院・介護保険施設等で実施される多職種連携に係る会議等に年1回以上出席していること。
・過去1年間に、栄養サポートチーム等連携加算1又は栄養サポートチーム連携加算2を算定した実績があること。
・在宅医療又は介護に関する研修を受講していること。
・過去1年間に、退院時共同指導料1、退院時共同指導料2、退院前在宅療養指導管理料、在宅患者連携指導料又は在宅患者緊急時等カンファレンス料を算定した実績があること。
・認知症対応力向上研修等、認知症に関する研修を受講していること。
・自治体が実施する事業に協力していること。
・学校校医等に就任していること。
・過去1年間に、歯科診療特別対応加算又は初診時歯科診療導入加算を算定した実績があること。
10.歯科用吸引装置等により、歯科ユニット毎に歯の切削や義歯の調整、歯冠補綴物の調整
時等に飛散する細かな物質を吸引できる環境を確保していること。
11.患者にとって安心で安全な歯科医療環境の提供を行うにつき次の十分な装置・器具等を有していること。
・自動体外式除細動器(AED)
・ 経皮的動脈血酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
・ 酸素(人工呼吸・酸素吸入用のもの)
・ 血圧計
・ 救急蘇生セット
・歯科用吸引装置